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「あ、起きてる」
しばらく目の前の風景をぼーっと眺めていたが、背後からの声に驚き、勢いよく振り返った。
「……ぅ」
が、血を流し、軽く貧血状態に陥っていた結城は、目眩に襲われる。
「あっ、ごめん。そういや、結構血、流してたんだよな」
頭上で、申し訳なさそうな声が控え目に笑う。
結城はなんとか目眩をやり過ごし、ゆっくりと顔を上げた。
そこには細身で長身の男。ただ細いわけじゃないのは、身につけている七分丈のシャツから覗く腕や、襟もとの肉付きから見て取れる。
その上には比較的中性的で、整った顔、そして、長くも短くもないさらさらとした黒髪。
ただ、その夜空を映した様な青い瞳は、凛々しくも雄々しくもあり、只者ではないオーラを放っていた。
「うん、まだぼーっとしてるか。作っといてよかった」
そう言いながら男は、手に持った金属製のコップを差し出した。
受け取って覗くと、琥珀色をした液体がはいっている。
「ああ、変なもんじゃないよ? 薬、血の生成を助けてくれんの」
訝しげな表情をする結城を見て、男は付け加えた。
「……ッ」
結城は数10秒程その液体を見つめ、一気に流し込む。
「う゛……なんすかこれ」
あまりの苦さに結城は顔をしかめた。目もつけられないほどに酷いしかめよう。
その様子に、男は笑みを浮かべて口を開く。
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