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――興起の青年――
――7年前、14歳の頃。
少年だった彼の目の前で、英雄が心臓を貫かれた。
目の前で止まった鉄片。顔にかかった、赤く生暖かい液体。思い出しただけで、息が詰まりそうになる。
ただ、それが英雄に対する意識を変えた瞬間だった。
死なない。それをうらやましく思った。
死なない。その意味を考えた。
死なない。それが、なんて苦しいことなのだろうか、そう思った。
英雄を見て、その呪いを目の当たりにして、死ねるということは幸せなのかもしれない。そうとさえ思った。
恐ろしいというのに。失うことが、自らの命が尽きることが。
そう思ったその時にも、庇われなければ自分が死んでいた事実に、震えていたというのに。
本当に求めることと、真逆のことを彼は英雄に望んでしまったのだ。
「……あんたは……本当に死なないんだな……」
彼は、やっと絞り出し、かすれた声で確認した。
「そうだよ、僕は死なない」
英雄は事も無げに二コニコと笑いながら続けた。
「だから、キリヤが1人にならないのは、ほぼ確定だね。息子の成長を最後まで見届けられるのは親としては」
「だったら……!」
嬉しいよ。と口を動かした英雄の言葉を遮り、彼は叫んだ。
数回小さく呼吸を繰り返し、静かに続けた。その後を決める、発言を。
「だったら、俺があんたを殺すから……」
「……えっ……?」
驚きで呆けた顔をした英雄に、言い聞かせるように、自分に言い聞かせるように。彼はもう一度言った。
「殺すから。ちゃんと俺より先に死ね……オヤジ」
確かなことは、その日、誰かが自分より先に死ぬことを、彼は認めたということだ。
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