第一章 物語は走りだし、主役は逃走する

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――洞窟の??――  誰も知ることのない洞窟。  岩いわから染み出す水の珠が、先に落ちたそれの作る池に落ち、はかない音と共に、波を立てる。    それは、静かに表情もなくその様子を眺める。 「聖水はなぜ聖水となったのか。 その昔、この世では神の加護を得るとされ、悪魔を払うために使われたソレは、悪の気に触れると反応し、かけられた者を苦しめるものだった。 だが、悪の気の無いものなど存在しない。 すなわち、聖水は生けるものにとっては毒水、恐ろしきもの……。 知っていれば、そのような名はつけぬ。……知らぬことは罪に等しい。 ……さて」    その無機質な声は、響き渡ることもなく落ちる。 「祭りを始めよう、楽しい祭りを……な」 物語は、復讐を望むそれの笑みとともに。
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