第二十一章 決起する英雄の物語と過去

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――喫茶店の情報屋―― ――  スバルが消えた、“あの日”。  男はスバルの首都、リーリエンにいた。  もぬけの殻となった街の中に、ひとりぽつりと立っていた。  男の視線の先には、侵攻を受ける前にはなかった王の城。  魔族の中で生きたくないと、代わりの王の命で首都から離れた位置に建てられた建造物。  数分後に破壊の中心となる起こるその場所を、静かに見据えて立っていた。 『あとのことは、お前に任せるしかない』 『なにもできない私たちを許してくれ』  視線の先にいるはずである友と、守るために国の外へと送った主の言葉を胸に、そこにいた。  必ず還るのだ。そう強くこぶしを握りながら。  やがて、大きな力が城で膨れ上がり、強い光が城から漏れ出る。 「灯をともせ」  男はその光を焼き付けるように、愛しむように、称えるようにじっと眺めていた。 ――
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