第二十二章 飛んだ青年と役者の瞳に狼煙が映る

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――ある花――  ソレは、花だった。  白く透き通った花びらを持つ、美しい花だった。 「ねえねえ、あなたのなまえはなんていうの?」  ひとりの少女に話しかけられるまで、知らぬ間にぽつんと咲いた花だった。  少女を気に入った花は、少女を愛した。  誰からも愛されるように、か弱い少女が強くいられるように、花は少女の心に棲みつき、少女を見守ることにした。  花が願う通り、成長した少女は誰からも愛され、控えめながら逞しい心をもつ者となった。  "ふたり"が出会ってから月日が流れ、健やかに育った少女は、子を授かった。  少女の心と同じように、花はその子供たちも愛すようになる。  先に生まれた男の子には、誰からも愛される優しい心を。のちに生まれた女の子には、誰よりも強く優しい力を与えることにした。  花の願うとおり、男の子は周りから慕われ、女の子はその力でみなを癒し、愛されるようになる。  時がたち、成長した男の子は、花や少女のそばを離れるが、花は遠くの地にいる男の子を愛し続けることになる。
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