第二十四章 “その日”それぞれの約束は帰る(前半)

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「だってさー。2人の再会見たいがために母上の言いつけ守って柾守ってたんだよー? 頑張ったのにさー」  ま、そんなもんか。お約束通りの展開を得ることができなかったテイカは、心の底から悔しそうに嘆いた。 「知りたくなかった」  ただの過保護だと思っていた一宮は、ここ一番の衝撃に困惑する。 「できないよ、身内の男守るとか。それくらいのご褒美なきゃ。聖人じゃないんだし」テイカはぶつぶつと文句を垂れる。 「それに母上だよ。ぼくに約束のこと教えてくれたの。羽崎ちゃんも柾も戦専受かったの知ったときは、「やっとかー」っておもったよね」 「……知りたくなかった」 「どっちにしろ気に食わないわ」 「まあ、思うところはあるだろうけど、特に羽崎ちゃんはね」  だいぶ減ったからもういいよね。テイカは立ち上がり、風で魔物を押しのけ、倒しやすいようにコントロールし始める。 「なんとなく見えてきたね、九条先輩がなにと戦っているのか」 「魔女とオーザンだろ」  いつも通り話が変わったな、と一宮は呆れる。 「それはそうなんだけどさ。わからないじゃない、魔女の正体」 「……わかったの?」  問いかけに、テイカは大きく頷いた。 「考えてみようよ。まずは、九条さんがなんなのか」 「なにって、空の民だろ」  言ノ葉を使える人間は、それ以外にありえない。 「じゃ、空の民は?」 「……」  一宮が口をつぐめば、テイカは口角をあげた。 「不思議だったよ、ぼくは。なんで、書庫に入ることを、九条さんは許されたのか。九条さんのぼくらが見たこともない術の使い方を父上が知っていたのか」
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