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「急いできてみれば、そういうこと」
目を開ければ部屋の入り口に、青年が、呆れた顔でそこにいた。
青年は、躊躇することなく洞窟の部屋へと踏み入れた。
一歩進むごとに部屋の空気は彼に染まり、歓迎するように集まる空気が、彼の羽織るマントを揺らす。
静かに魔王の隣に立ち、前を見据えるその瞳は、空を移したように澄んだ青で満たされていた。
「早かったね。地下へは行ったんだろう?」
「行ったさ。あんな記憶の戻しかたされたら行くに決まってる。まさか、時間稼ぎだとはね」
なんのヒントもなしに。青年の蔑むような目に英雄はたじろぐ。
だが、ヒントなら、残してきたはずだった。
「え、壁にここの座標を」「気付かなければ意味がないよ」
きっぱりと言い切った青年は、どこからともなくナイフを取り出し、くるりと回す。
柄の黒い折り畳み式のナイフ。
英雄は、そのナイフに見覚えがあった。
「それ……ユウトに渡した……」
「そう、そのナイフが鍵になったんだ。……オヤジがユウトに渡したこのナイフに刻まれていた式……ユーイが基地に組んだものとほとんど同じでね。その場所が認知できない、特定のモノの侵入を防ぐ寄生型の式。
……ユーイがなんでこの式を知ってたのか、ずっと引っかかっていたんだ。でも、ここへきて謎が解けた。ここの式も同じだ。
あとはまあ。オヤジの魔力の痕跡辿らせてもらったよ」
どうやら、なにもしなくともたどり着けたらしい。
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