第二十五章 “その日”それぞれの約束は帰る(後半)

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 4か国のあげた不審な動きは、バラバラなように見えて、共通点があった。  まず、直接的な関連は証明できないものの、付近で発生源ともとれる拠点が発見されている点。次に、踏み込んだ拠点になんの資料も残っていない点。最後に、その拠点の所有者が、前触れもなく姿を消すか、死んでいる点だ。 「いずれの事件でも、捕えたもの達と事件前に接触していた人間の中に不審人物は居なかった。そういうことでしたね」  レウス国王が各会議の報告を振り返り、ため息をついた。  なにしろ、大陸会議のような大きな規模の集まりは、すでに共通の目的が存在すれば強いが、それを探る段階においてはめっぽう弱い。各国の立場や事情が邪魔をするのである。  こういった場合に頼りになるのは、派遣屋のような組織である。だが、困ったことにシリウスとレウスの派遣屋はさほど仲がよろしくない。 「派遣屋シリウスのメンバーはどうなんだ?」  レウス派遣屋代表が、シルビアのそばに寄り、囁いた。 「これだけ大規模なものだ。どこかで手引した人間がいたとしても不思議ではあるまい? ……最近なら、魔術戦闘専門学校に入学した生徒。出身地もこれまでの実績もないだろう。こいつはどうなんだ? 信頼できるのか」 「レウスの派遣屋は、他国の派遣屋のメンバー詮索するほど暇なのか」シルビアはため息をつき、背もたれに背中を預けた。「あれは、《異界の旅人》だ」 「馬鹿な」 「国には報告してあるぞ。覇王の推薦だからな」 「なぜ、レウスの魔専でないんだ?」 「城ノ内」 「当初の《異界の旅人》の体力や知識で、レウスの魔専には入れない」 「出身地と実績が大切なんだろう?」  レウス派遣屋代表は舌打ちをした。  しかし、なにかに気が付いたように「あ」と声を上げる。 「では、先の不快な光は?」
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