第二十五章 “その日”それぞれの約束は帰る(後半)

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「ドラゴンライダーの男が放った光のことですか?」 「不快? そうは思わなかったが」  応接間にいる者すべてに届くように発せられた問い。応接間は、レウス派遣屋代表に同調するような声と、触れてくれるなというようなため息でざわついた。  因みに、ため息は主に各国の首脳のものだ。飛龍の長と顔を見合わせて笑う神治支社の神口を除いた、だが。  ため息は耳に入らなかったらしい。レウス派遣屋代表はシルビアに詰め寄った。 「浴びた者たちの健康状態に異常は報告されなかったが……まさかそいつが主犯じゃなかろうな。シルビア。シリウスの魔専所属だろう」 「ああ、そうだが」 「身辺調査はしてあったのか」 「特には。しかし、うちの九条は今回のような活動に賛同する人間ではない」 「誓ってか」 「誓ってだ」  レウス派遣屋代表は、閉じた目蓋の奥から鋭い視線を刺すシルビアを見下して鼻で笑い、側に立つ城ノ内の肩を叩いた。 「……ま、確かに魔力なしだしな」 「ああ、そうだな。うちの魔力なしが主犯なら、もっとうまくやる」  なんとなしにレウス派遣屋代表が置いた侮蔑の言葉に、シルビアが笑い、 「そうですね。もっと徹底的にやるでしょう」 「それに、民間を巻き込むような馬鹿はしませんね」  そこに神口とクサハが便乗する。  予期せぬところからの発言に、レウス派遣屋代表が困惑の表情を浮かべ、後ずさった。
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