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「はじめましてー」
「レーナさん。王や皇女の御前で失礼ですよ」
「でも、このほうが面白いでしょう?」
頭上で手を振るレーナを諭し、アンダーソンは「失礼」と続けた。
「彼女は心王様の愛娘で、ゴーストのレーナです。彼女に情報を集めさせておりました。黒幕を裏で手引する裏切り者の名前ですとか」
「これでーすよ」
降りてきたレーナが、4つの束をぺらぺらとめくって見せる。
「裏付けは、レウスは猫目、タレアはオンドル、バラナルは私が」
猫目、オンドルは、以前手紙を送っていた協力者のことである。各国でそれなりの地位におかれている者たちだ。因みに、オムは土地神のひとりウーに、“情報提供”という形で送っていた。
なぜオムだけ情報提供かといえば――
「オムだけ不公平では?」
「私としたことが、神口様には勘づかれてしまったのです」
指摘にアンダーソンが苦笑すると、神口は微笑む。
どんなに極秘裏に動いても、勘には叶わなかったのである。
「ですので、情報提供という形を。……もちろん、この件に関する事のみにございます。いずれの国が有利になるような情報には、一切触れておりません。私に流れる魔族の血にかけて」
アンダーソンは、愛おしい者に触れるかのように優しく、自らの胸に手を当て、ゆっくりと目蓋を閉じた。
「もし、信用できないというのであれば、この場で自白の呪いをかけていただいても構いません。……ただ、魔族を……いえ、吸血鬼の性分をご存知ない方には、いささか衝撃的でしょうが」
「そうだな……。貴方の持つ様々なキオクと感情を引き受けるには、心構えが必要となる。言い伝えが正しければ、ここに居る内の数名は、10日以上悪夢の中をさまよう」
今にも自白の呪いをかけそうな自国の役人たちを牽制し、レウス国王は、小さく息を吐く。
「もったい付けずに、言ったらどうかね。貴方がここにいるわけを」
「流石。陛下は聡明でいらっしゃる」
アンダーソンはレウス国王に深く頭を下げてから、口を開く。
「確認をさせていただきたく参りました。スバル国王、その補佐役として。再建時の約束事を」
確認のための、事実を口にし始めた。
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