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応接間が静まる。
ただ静かなだけではない。ある者は応接間の空気を読み、ある者は状況を整理し、ある者は立ち回りを考える。彼の発言がなにを意味するのか、各々がそれぞれの立場で吟味し、考えを巡らせているようだった。
その状況を、満足げにアンダーソンは眺める。
と、応接間の扉が、勢いよく開き――
「報告いたします!」息を切らして、城の者が飛び込んできた。
「空が……! 山脈を覆う雲が……!」
「空が日を無視して色を変え、山脈より朝靄のような雲が立ち上っているのでしょう?」
肩を震わせる城の者に、今度はなんだとどよめいた応接間だったが、すぐさま飛び込んだ凛とした声に引き寄せられた。
嵐の中で灯台を見つけたかのように。ただ、その灯台は、陸にあるのか定かではないものなのだが。
「我が主は、オーザンの元へ飛びました。元凶と戦っておられるのです」
息をのみ次の声を待つ者、訝しげに眉をひそめる者、数名がその空気をおもしろそうに眺め、一部はもうすでにどうとでもなれと考えることを放棄していた。
「よろしくて?」
そんな中、タレアの皇女が控え目に手を挙げた。
咳払いをした彼女は、困ったように眉を下げて笑う。
「つまり……こういうことなのかしら? この事件を片付けるから、再建を認めろと。……夢を描くのは結構ですけれども、それだけの条件で大陸が動くだなんて……。うわごとは余所で口にしたほうが、あなたの為よ?」
「いえ。再建は決定事項でございますので。此度の事件の解決は、我々からの贈り物にすぎません」
あろうことか皇女のからかいをきっぱりと断ち、
「我が主はまだ若い」
アンダーソンは、笑顔で続けた。
「つきましては皆様に、ご助言を賜りたい。ただそれだけのことなのです」
“大陸は一切口出しをしない”。その、彼らに必要であるはずの約束事を、堂々と捨てて見せた。
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