第二十五章 “その日”それぞれの約束は帰る(後半)

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「……蛍玉?」「から孵ったキツツキ」  結城の目の前に、周囲を淡い翠で染める小さな鳥が現れる。その鳥は、伏していたせいで隠れていた胸部の傷に近づき、つついた。  キツツキがつついた場所にくゆる煙のような淡い翠が集まり、みるみるうちに乾いた血だけを残して傷が消える。 「……解き忘れ、か」  ユーイの話から、空の民の魔法であり、キリヤの解き忘れだと判明していた蛍玉。テイカが口にした、“蘇生の力が宿っている”という言い伝えも、“幻素の塊”という説もあながち間違ってはいなかったらしい。  治癒の力を持った鳥だ。 「『翠の衣を纏いし鳥、生み落したる魂』っつゥの、マジだったなァ」  気遣うように飛び回るキツツキに結城が手を差し出す。と、キツツキはその手の人差し指にとまり、体をふるわせた。  翠の光が広がり、結城を包み込む。  ほんの少しだるさが肩から抜け、結城はキツツキを指の腹で優しく撫でてやる。 「しかし、おめェはバカだ」 「……ちょっと危なかったな」苦笑する。 「なにがちょっとだァ? ソイツ居なかったらかなりヤバかったろ」 「一応、方陣式持ってきてたけどな」 「誰が使うってんだ」 「黒羽だよ。俺がもってるの知ってたし、使い魔は俺の魔力を勝手に使える」 「エセ教師の入れ知恵か……ックソ。イヤな知識ばっかつけやがって」 「それに、オーザンがとどめさそうって時に、[手を出すな]って俺からの命令。俺がマジで死ぬと思ってたら、無視したろ。黒羽なら」 「クソ主がァ」黒羽はがしがしと頭を掻いた。
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