第二十五章 “その日”それぞれの約束は帰る(後半)

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「んでェ? 収穫はァ?」 「ああ、わかったよ。オーザンが自分で直接殺さないこと」  『殺してあげたくて仕方がなかった』そうは言いつつ、妻は病気で死んでいる。ユーイの最期はわからないが、サンプルである体は変わらず残してある。クォーロや夜南は、間接的に。  ただ、わずかな良心が――ということではないのは確かだった。自分の持ち物に傷をつけたくないとか、直接手を汚したくない、もしくはそれ以外の、理解しがたい、否理解したくもないポリシーがオーザンにはあるのだろう。 「だからユーイは16年も信じちゃったんだ」  信じたいものにとっては、一筋の希望にも映りうる。 「ま、助かったことにはかわりねェ。今なら、逃げられそうだなァ」 「……黒羽」  逃げ道を探そうとする黒羽を引き止める。  ちらりと結城を確認し、下唇を突きだして、見てはいけないものでも見たように一度目をそらした黒羽。彼は大きなため息をつきながら頭を掻きむしり、やがてポケットに手を突っ込んで面倒くさそうに振り返った。 「正気か?」 「うん、ダイジョブ。血迷ってるよ」  結城は眉を下げて笑った。 「でも、これは自分の意志だ。それに、オーザンならもう怖くない」 「異世界きて狂っちまったらしいなァ。感覚」 「そうかもしれない」 「アァ。久々にイイ面してんのも癪だ。ったく、覇王に頼まれたってのによォ」 「なにを」 「絶対戦わせるな。ってな」 「いつの間に?」 「さっきだ。覇王の行動と言葉合ってなかったろ」  結城は爆発前の彼らのやりとりを思い出した。「ああ、あれか」思い返しながら翠のキツツキを放す。  キツツキは結城の周りを飛び始めた。 「でもその約束なら、ダイジョブだ。破らない」  結城ユウトは『如意棒』を手に取り、立ち上がる。 「一発、殴りに行くだけだからさ」
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