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――空けの鉄槌――
「力のない俺が、正攻法でこの世界の人間に勝つのは無理だ」
立ち上がってから、主役はこう切り出した。
「俺にあるのは、『如意棒』、キリヤの解き忘れ、解放してない魔力とユーイから貰った力、あと……黒羽が居る」
噛みしめるようにあるものを数え、刻み込むように現状を口に出して整理する。
「オーザンは、俺がもう死ぬと思ってる。勝機があるとしたら、今しかない。……ただ、シュウとキリヤが近くにいるからな、俺に対しての警戒はなくなっても、他への警戒はしてる。つまり……、俺への油断は、ほぼ意味がない」
「そうだなァ。で、どうするんだァ?」
もうすでに話が見えているのか、にやつくカラスの問いに、主役は口を開いた。
「油断を隙に、無理矢理変える」
――――
――
「残念、偽物ォ」
偽の自分が貫かれるさまを見て、結城ユウトは扉の陰から飛び出した。
派手に散った黒い羽根が、オーザンの視界を覆っている。
そこへ目掛けて走る。
足に意識を向けた。
ちりっと熱が走り、スピードが増す。
その視界の隅に、投げ出された『如意棒』が映った。
手は放しても魔力は離さずに。
腕を限界まで伸ばし、ぐっと引き寄せるように引く。と、『如意棒』は吸い寄せられるように主のもとへと戻る。
オーザンまで、あと少し。
「黒羽!」叫ぶと、同じ顔に化けたそいつがにやりと笑う。
「耐えろよ、ユウトォ!」
黒羽が指を鳴らしたその途端、どくんと心臓が脈打ち、内側から沸騰するような熱さが体中を駆け抜けた。
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