第二十五章 “その日”それぞれの約束は帰る(後半)

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―― 「魔力を当てようと思う」 「代表に会った時のアレだなァ」  主役の提案を聞いたカラスは、代表室に入った瞬間、足が竦んで動けなくなった主役を思い出すように、しみじみと言った。  ただすぐに「くしゃみの」と笑い出したが。 「そうアレだ。とはいえ、代表のは無理」  笑うカラスに主役は眉をひそめ、咳払いをひとつしてから続けた。 「だから相談だ。……黒羽、俺の魔力一気に解放したらどうなる?」 「コントロールできない分。だから膨大な魔力が余波で広がる。……ま、確かに隙を作るにゃァ十分だ。だがおめェ、耐えられんのかァ?」 「え、どうなんの?」  急に不安げな表情をした主役に、カラスは笑顔で告げた。 「この世界に来た時を思い出せよ」 ―――― ―― 「ゔ……っ!!」  一瞬、意識が遠退く。  歯を食いしばりそれに耐えれば、鳩尾あたりから爆発的に広がる熱に襲われる。  爆発は、脈打つように何度も何度も起きた。  到達した熱のせいで、指の先が痺れた。目の奥が熱い。痒い。体の中を、無数の糸が貫くような痛みが走る。  しかし、足は止めない。  結城は、空いた手で鳩尾あたりの服を握る。  足の向く先には、視線の先には、オーザンがいる。  笑みは崩れて歪み、防御するように手を前に出すも、押されるように力なく後退している。 行ける……!  結城はさらに足に意識を向ける。が、痛みに麻痺し、感覚が上手くつかめない。  視界に、翠の光りが映り込む。 「……【青啄木鳥(あおげら)】」  憶えのない名前がこぼれ落ちる。  翠の鳥が足下に消え、途端にふっと視界が開ける。  足に力が籠もった。  顔を上げれば、オーザンの驚いた顔と目が合う。  身体を低く沈め、『如意棒』を持つ右腕を引いて構えた結城は、地面を蹴った。
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