第二十五章 “その日”それぞれの約束は帰る(後半)

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「っ!!」  まずは『如意棒』で一突き。だが、それは掴まれ、数センチ届かず。  オーザンが手を振り上げ、目の前に方陣式が現れる。  咄嗟に『如意棒』を伸ばす。勢いよく伸びたそれは、オーザンを壁にたたきつけた。  式が消える。 不意をついたら、追撃。  思うよりも先に、足が床を蹴る。  左手の拳に力が籠もる。  碧い光りが皮下を走る。 「【碧鱗(へきりん)】――……!」  碧が広がる。  鱗が拳を覆う。  溢れる淡い光はいっそう強く周囲を染め、解放されて行き場を失った魔力をも巻き込んで大きく広がる。 ――お父さん……!  不意にどこからか、泣いて止める声が聞こえた。  結城はその声に微笑み―― 「あんたの息子、最高の馬鹿だよな」 あんたの息子にしては、優しすぎる。  心の中でそう呟き、ひと思いに拳を振り抜いた。
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