第二十五章 “その日”それぞれの約束は帰る(後半)

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 キリヤは魔女へと目を向ける。  彼女は黒の炎に包まれ、ゆらゆらと揺れている。髪や服を包んでいた炎も、肌へと侵食し、輪郭がぼやけ始めていた。土地神特有の金色に輝く瞳だけが、はっきりと形を保ち、やけに目立つ。  それは、見た目に気を配れないほどに、激しい怒りを抱えているということ。  キリヤは、魔女にぶつけられた、冷たく暗い合唱を思い出しながら、口を開く。 「さて、どうしようか」  と言っても、リーリエンという土地から離れ、恨みのみで動いている土地神に矛を収めるという選択肢はない。そもそも、それが出来たのなら、500年以上放置されることはないわけで。  オーザンが倒されて足は無くなったが―― 『どうということもあるまい』 「あなたにとってはそうだな」  魔女は、出そうと思えば出せたはずの手をださなかった。  普通の人間は、どれだけ長く、どれだけ近くにいようが、自らを崇めるうちのひとりでしかない。それが、土地神の性質であり、避けようのない事実である。  反対に、どれだけ離れていようが、一度でも愛し子として愛されたオヤジはいつまでも彼女にとっての特別。  話がそれてしまったが、つまり魔女は、説得どうこうをかんがえられるほど、甘い相手ではないということだ。 『ワタシより、――オマエはどうするのだ?』  魔女の黄の瞳が笑うように弧を描き、洞窟の闇が深まる。
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