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――真を持ち、価値を示せ――
大気が、染まる。
先ほどまでとは比にならない勢いで、夕暮れの空のような赤へ。
「俺が言ノ葉を使いたくなかったのは、恨めなくなるからだ」
瞳に、赤が流れ込む。
瞳の奥で、彼は、彼から全てを奪った炎を見た。
淡く揺れる赤は、炎が激しく燃え上がるように広がる。
「みんなを殺した俺の存在すらも、恨めなくなるからだ」
赤が揺れ、橙が流れ込む。
瞳の奥で、彼は、彼の憧れた父の炎を見た。
揺れる赤は暖かく周囲を照らし、揺れる大気の先で、星のような光が瞬く。
「認めたくなかったからだ。俺が、幸せだってこと」
赤は姿を変える。
全てを燃やすような翼へ、力強い嘴へ。瞬いた星のような光は三本足の爪へ。
瞳の奥に刻まれた、最期の笑顔が揺れる。
彼は微笑み、これ以上にないほど穏やかな心で、その名を告げた。
「七条【赤烏】―燃やせ―」
黒い炎が、燃える。
赤の大気から飛び出した三本足の烏は羽ばたいて舞い、魔女の周囲を飛んだ。
赤が巻き上がり、魔女と彼女が纏う黒い炎を包み込んだ。
その中から、悲鳴が上がる。
魔女の声だけでない。老若男女様々な声を集めた、劈くような悲鳴が洞窟に満ちた。
「無下にはしないよ。きちんと抱えて生きる」
自らに言い聞かせるように強く、キリヤは応える。
そうして、魔女へ意識を向けて続ける。
瞳に、白が移った。
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