第二十五章 “その日”それぞれの約束は帰る(後半)

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 視線を下ろすと、いつの間にか刺し傷が治り、こちらをみて誇らしげに笑うオヤジと目が合う。  その顔を見て、「ああ、そうだ。これだけは言っておかなければ」ふと思ったキリヤは、付け足した。 「でもまあ。見つからなかったその時は、腹括って殺すから」  殺人予告を、した。 「え……なにそれ」 「当たり前だろ。あんたはずっと28歳のまま。……つまり、期限は7年だな」  茶化すふうでも、冗談を言うふうでもなく淡々と、キリヤは期限を口にした。  呪いが解けたとして、なるべくならオヤジの体の年齢を越していたくはない。  それが、キリヤの本心だった。 「というか、『俺より先に死ね』は訂正してないだろ」  それに、壊す術のほうが簡単に見つかるのである。 「え、今度は胃が痛い……」  吹っ切れた息子が怖いんだけど……! 息子に寿命を勝手に決められ、頭を抱えたオヤジは嘆く。 「ケチ男ォ。やっぱおめェ、人間じゃねェだろ」  緑の血だろ。それを見ていた部外者のカラスが、呆れた。 「黙れくろぶ」  “その日”はこうして、騒がしいまま、幕を閉じる。    目覚めぬ主役を置き去りにして。
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