第二十六章 主役は逃走し、彼らの知る真実は歩く

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 スバル、リーリエンの丘の上に立つ青年の目の前には、なにもない広大な土地が広がっていた。  髪をなでる風に目を細めた青年は、そのだだっぴろい土地のとおもなさに当てられたように、仰向けに倒れ込んだ。  青年は、地面に身を任せ、目を閉じる。  若い草が肌をくすぐる。成熟した草は風に煽られ、心地のよい音を耳に届けた。 「終わったと思ったら、もう始まるんだね」  暖かな声が降り、青年の口角は上がる。  目を開けば、その瞳の色を移したような雲ひとつない青空が広がっている。  青年は大きく息を吸う。葉が口に入り、急いで吐き出す。苦い味が口に広がり顔をしかめた。  それに笑い、青年はまた、空を見つめる。 「……お前さ、空の色好き?」  青年は空に手を伸ばす。 「好きだよ。あたりまえじゃない」  そりゃよかった。空に伸びた手が、(くう)を掴んだ。青年は、その瞳に空を戻し、笑う。 「――俺も。この空の色が、ずっと好きだった」  少々開き直りも入った明るい声は、広がる空色に吸い込まれていった。 物語は、彼の選んだ平和と共に。
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