第四章 主役は怒り、英雄は微笑む

21/23
758人が本棚に入れています
本棚に追加
/882ページ
 赤く光る瞳に目をやれば、彼はニコリと笑い、続ける。 「……質問に移っても?」 「どうぞ……」 「ありがとうございます。ではまずお名前からですね……―――」 ―――「アンダーソンくん、どう? 大丈夫そう?」  名前、身長、体重、誕生日……その他諸々要るのかもわからないような質問に答え終わった頃、シュウが正面のドアを開け、顔を出した。 「魔王殿、問題ないでしょう。これだけ情報があれば、偽造パスポートでもなんでもお造りできますよ」  さらっと答えるアンダーソン。 「偽造……」  他に引っかかるワードがあったはずなのだが、結城にはそれが衝撃であったらしい。 「んー今のところその予定はないなあ。正式なモノだから」 「では、詳しくは当事者もお呼びしての方がよろしいですね」  書き終えた紙の束と羽ペンを小脇に抱え、椅子から腰を上げると、アンダーソンはシュウに尋ねた。  ああそれなら。とシュウは続けた。 「丁度来てるし、大広間でお茶でも飲みながらでどう?」 「良いですね。……では、積もる話もあるでしょうし、そちらで待たせていただきますね」 「ありがとう」  何かを悟った様な妙に大人びた笑顔を残し、アンダーソンがドアの向こうに消える。直後、部屋は沈黙に支配された。
/882ページ

最初のコメントを投稿しよう!