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追われずに歩く街は、落ち着きを取り戻していた。
聞いた話によると、月城三汰や派遣屋メンバーらのおかげで被害を最小限に抑えることができたそうだ。
それでも、レウスやバラナル内の他の地域と比べれば、シリウスの被害は大きなもので、家や店を破壊されたものもいるし、民にも派遣屋シリウスのメンバーにも死者がでた。
結城が目にした記事にも、“こうなる前になぜ防げなかったのか”という国や派遣屋、さらには《異界の旅人》を批判する文面が載っていた。
確かに気になる。だが、それ以上に結城が気になるのは、その批判記事を鵜呑みにし、追ってきた中にもいたような、《異界の旅人》を恨む人間がどれほどいるかである。
これからの生活に関わることだ。
「噂って結局どうなってる?」だから、テイカに確かめた。
「え? 神の遣いであるカラスを従え、黒幕を討ち取った異世界の勇者様のこと?」
「……なんだそれ」
『変人月城教諭が珍しく受け持った、カラスと話す痛い新仮生徒』から、かなりの変わりようじゃないか。
戸惑う結城に、テイカはさらに続ける。
「今のところ、解決したことになってるよ、全部。よくわからないことに関しては。結城くんが来てからあたりの」
「新聞に載ってるだけじゃなく?」
「だけじゃなく」
「全然違うんだけどな」
「違うんだけどねえ」
「え、じゃあ魔女とかのことも?」
「魔女のことは、全然ない」
「なかったことになってるわ」
結城は唸る。確かに大陸に手を出したのはオーザンだが、その裏の動機には魔女がいるのだ。
空の民を恨む魔女が――。
「だからか……?」
結城はふと顔を上げる。
魔女、いやスバルの首都であったリーリエンの土地神が元凶となれば、魔族や空の民がバッシングを受けるのは必至。
だがそうだとして、これだけの事件の情報を統制するとなれば、組織あるいは国単位で動かなければできない。
「……こわ」
結城は身震いをひとつすると、それ以上考えることをやめた。
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