第二十六章 主役は逃走し、彼らの知る真実は歩く

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「なにも、聞かないのか?」  結城は、小さく息を吐く。 「聞かねーよ。目を背けることと逃げることに関してはプロだから」  ふいに洞窟の間に行くまでの光景が頭に浮かび、結城はそれを振り払うように頭を振った。  思い出すこともはばかられるほどの赤く凄惨な光景。あれが全て飯田シュウのせいであることは、あの場に立ち、彼の表情を見て、すぐに理解した。  肯定する気はさらさらない。人殺しなんて、どんな時代どんな理由があろうと、どの国どの世界に行っても、許されるべきでない。結城の中でもそれは間違えないし、今後一切覆すつもりもない。  今回だって、ただ単に、あの血にまみれた光景を飯田シュウが作った事実が、“飯田シュウとの縁を切る”という選択肢に結びつかなかっただけの話。  これを傍から見て、“美しい友情の形”と賛美する人間がいたのなら、結城は間違えなくソイツの神経を疑うだろう。  立場が違えば戦犯で、戦争のない時代になってまた罪を重ねた者を、咎めず責めず受け入れる。  結城自身、気が狂っているとしか思えないのだから。 「なあシュウ」 「んー?」 「なんか本当に俺いつ前触れもなく戻れるかわかんねーし、お前、会いたいときに捕まらねーし、だから今言っとく」  全て理解した上で、それでも結城は飯田シュウに伝える。
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