第二十六章 主役は逃走し、彼らの知る真実は歩く

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 増えた追手を引き連れて、結城は中心街を抜けた。  飯田シュウのせいで、派遣屋への道を失いながら。  しかし中心街を抜け、さすがに野次馬は減ったらしい。残ったのは、恨み節を口にする連中に、手合せをとしつこい連中やら、カメラを抱えた連中やら……それでもまだ多いが。  結城は走る。  やがてその足は、旧市街やらの名残か、扉はもうない大きな門へと近づいた。  四角く切り出された石を積み重ねたような門だ。蔦が巻き付き、緑が茂っている。  その先に川があるのか、どこからか、水のせせらぎが聞こえた。 「……オイ、鍵出せユウトォ」 「え、もう今度はなに?!」  急に横に現れた黒羽に、結城はうろたえた。  それに、鍵といわれてもわからない。  結局探しても見つからないため、停滞していた上に、ここ最近は考える暇もなかったのだ。 「思い出せよ、土地神の言葉。すげーヒントだったぜェ?」  それなのに、黒羽はせかしてくる。  結城はその鬱陶しさに眉をひそめた。 「今それどころじゃ」 「それどころだ。逃げてェんだろォ?」  逃げたい、確かに。  そう咄嗟に思った結城は、目を細めて記憶を引きずり出した。 『帰り方? そんなものねえよ』 『ただ、鍵は手前がすでに持っておる』 『その時になれば、きっとわかるわ』  帰り方を探すのは無駄だ、帰り方はない。鍵は、もう持っていて、その時になればわかる。そんなことを言われた。それから―― 『帰る道は開く。鍵は、汝の意の如く形を変えるだろう』  今持っているもので、自分の意志のように形を変える物。 「えっ」  声を上げた結城は慌て、読んだ本の記憶を辿(たど)る。   『使い魔が与えられるのは“鍵となるモノ”と“力となるモノ”だけ。つまり、ヒントや助言と武器やら少量の助力』
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