第二十六章 主役は逃走し、彼らの知る真実は歩く

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「――ってもしかして鍵って『如意棒』?!」  そう叫ぶ結城の握る『如意棒』が、手の中で勝手に波立ち、急激に縮む。 「ったく。『如意棒』っつったら見事に“棒”の使い方しかしねェ」 「はあ?」 「変幻自在ッつったのに」 「んなこといわれても……ていうか、これ俺の家の鍵じゃね?」  握る手を開き、元『如意棒』に目を向ければ、そこには鍵があった。  しかし、鉄でできた、一般人なら必ず目にしたことがあるであろう普通の、ごくごく普通の形状をした鍵だ。それに、その鍵には、結城が何年も前に買った、もう色の剥げているサッカーボールの鈴のキーホルダーが付いている。  結城には、見覚えしかない代物だ。 「なあ、これ家の鍵じゃ――」 異世界の扉の鍵ってせめてこう、金色で――  鍵が波立ち、キーホルダーが消え、金色に変わる。 もっとこう、重厚な感じの古めかしい。  また鍵が波立ち、金が錆びつき、複雑なつくりの重いものへと変わった。 「な……なんか、変になってる……!」  軽くなったり、細くなったり、カードになったり、手のひらの上で次々に変わっていく鍵に結城は焦り、黒羽にすがるように助けを求める。  黒羽は鍵に目を向け、大げさにため息をついた。 「おめェの頭ん中の鍵のイメージがコロコロ変わってんだよ。……やっぱ『如意棒』ってイメージつけといて正解だったな。気にすんな、お前がそれに気が付きいいんだ。帰れるぞ」 「はあ?! そんなこと言われたってどうやって――」  結城の足が、大きな門の下の地面を踏む。  一瞬、結城の目に映る景色が色を失った。  その瞬間というのは、周りの人間からはこう見えていた。  結城が、消えた。
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