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――流離いの門出――
古びた門の周りを、多くの人間がうろついている。
「消えた……」
「あっけないというか、嵐のようだったというか」
「やっぱすごいね、仲良いんだ、魔王とも」
少し離れた建物の屋根上。
突然その姿を消した《異界の旅人》を探す人々を眺める彼らは、各々の感想を口にした。
しかし、あまりに唐突な別れ。絵描きも、少年も、少女も、そして噂好きも、門の向こうを見る表情は、どこか寂しげだ。
風が、どこからか木の葉を運んでくる。
「柾、消えるの、わかってたのか」
最後、《異界の旅人》に大きく手を振っていた少年を思い出し、絵描きが問う。
「あー。なんかそんな気がした」
誰よりも先に察してしまった少年は、寂しげな顔をして笑った。
彼らはまた口を結ぶ。
短い期間ながらもともに過ごした仲間だ、せめてきちんと別れの言葉を言いたかった、そう思うのは自然だろう。
だが、彼らの心境など、世間には関係のないこと。
静まった彼らの間に、離れた場所で「幻術だ」「転移術だ」と騒いで盛り上がる声が流れ込む。
「……で、どうするの? 私たち、大体の顛末を知っているわけだけれど。このまま、放っておいて良いのかしら」
少女が、門の前でたむろする者たちを指差して、肩をすくめる。
人数は減ったものの、《異界の旅人》が消えた理由についての議論が巻き起こっていた。
もちろん、彼にその技術がないことを知る少年達には、議論する理由もない。
「放っておいて良いんじゃないかなー」
噂好きの彼が、やんわりと少女の問いに答えた。
「これはぼくの見解だけどさ。口にした時点で嘘が入るんだよね。その場にいた人が過去のことを話しても、それも全部が真実じゃない。最終的に真実は、その時、その場所にしかないんだ」
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