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落ち合う場所となった喫茶店に到着すると、すでに相手はやってきていた。こちらに向けて軽く手を上げると、人懐こそうな笑みを浮かべる。
「わざわざ呼び出して悪かったな」
景山が謝ると、男は「気にするなって」と言いながら額の汗をハンカチで拭った。店内は、むしろ寒いくらいの温度だが男のシャツは所々が湿っていた。
突き出た腹は今にもボタンが弾け飛びそうな感じだった。薄い髪を丁寧に分けており、時折「今日も暑いなぁ、暑い暑い」などと呟いている。
「紹介します、知人の【薬師寺】です。高校時代に同じラグビー部でした。薬師寺、こちらは八幡弁護士さん。事故の事で今、調べてもらっているんだ」
「弁護士さんですか! これはこれは初めまして」
差し出された分厚い手を見て、ヤマラージャは顔をしかめてみせる。しかし、かずらは気にせず握手をかわした。
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