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「……棚橋さん……」
ぼそりと呟く景山。それを聞き、かずらは目を丸くさせた。
「どうも景山さん。そこの窓から、貴方の姿が見えたので出向いてあげたのよ」
気の強そうな女性というのが、かずらの第一印象だった。彼女が被害者である棚橋祐の母親、樹里に間違いないだろう。
年齢を推測すると30代半ばといった所か。派手な衣装と化粧をしており、距離があるにも関わらずキツイ香水の匂いが鼻に届く。
「それで? お金は用意出来たのかしら。こっちも息子の治療費やら何やらで大変なのよ。まだ四の五の言うつもりなら……分かっているわよね」
明らかに脅しだった。傍で聞いていたかずらはカチンときて、思わず口を挟む。
「残念ながら分かりませんね。きちんと説明して頂いてもよろしいでしょうか」
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