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音と地を伝わる振動がだんだんと夕のいる川辺に近づいてくる。
夕の思考が再びパニックで停止する。
「…一体、
なんだってんだよ…!」
近くにあった手頃な木の枝を拾うと、
剣道の様に中段に構えた。
もともと運動が好きではない夕にとって剣道の経験はない。
見よう見まねの構えである。
「ヴゥオオォォォォ!」
雄叫びとともに視界には四、
五メートルはありそうな1つ目の人が映る。
人ではない。
人に似た形の化け物である。
「うわぁぁあ!」
あまりの迫力に夕は尻餅をつく。
…逃げなきゃ…
逃げなきゃ…やられる!
頭では理解していたが、
恐怖で身体が硬直していた。
「くるなぁぁぁぁ!」
夕は必死で叫ぶが身体は未だ動かず、
一つ目の化け物は夕に向かって刻一刻と迫ってきた。
もう駄目だ、
夕は諦めて目を瞑った。
「そこの貴方、
今すぐ下がりなさい!」
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