ちがう

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自転車で五分ほどでつく焼き肉屋に入ると個室に入った。一番奥の端どこへ入るときでも基本的にその位置だった。 肉を頼むと思い出したように口を開いた。 「そう言えば昨日別れた彼女がお前の元カノだったんだ」 「え?どれ?」 メニューから目を離さず鍋田が聞いた。 「茉莉香だよ。外見がもろ俺の好みだったこ!」 背がちいさく、ボブを内巻きにしてあり、細く、笑うとえくぼができる。 「見た目に反して性格、やべーだろ」 経験してる鍋田はおかしそうに笑った。 「おー。おとなしい子だとおもったらやべーな」 見た目からは想像のつかない女王様タイプだった。 「鍋田との練習の時もさー、『バスケよりあたしの方が大切だから会いに来て』って」 「てめーがきめんなよって話だよなー」 「まー、ふつーにいや。って言って断ったんだけどさー」 びしっと箸を鍋田にむけた。 「そしたらだ。鍋田はやさしかったーってゆーんだよ」 嫉妬してほしさか言ったそいつにいらっときた。 「鍋田、あんなんにやさしくしとったん?」 おれはべーっと舌を突き出すと、鍋田もべーっと突き出した。 「一週間ぐらいでわかれたよ。そいつなら」 あんな強気なタイプはこのみじゃないらしー。 「んでさ、その子が言うにはお前の好み?前の好み?が俺とほぼ一緒だったんだって?」 にやっと笑いながら言うと鍋田はすこし気まずい顔をした。 「そんなに惚れてんだ。その子のこと」 肉を焼きながら笑いかける。 「お、おう…………」 心なしか頬を赤く染めながら鍋田が頷く。 また、俺が知らない顔だ。 頭で何か警報が鳴った気がした。
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