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私は横髪で動揺した顔が隠れるようにと俯く。
返事がない。
聞こえるのはだんだん大きくなって、近付いて来ることがはっきりとわかる足音。
岸本が近付いて来ている。
今の顔を見られるのは少し恥ずかしい。
だから、嫌だ。
俯きながらでも彼が見えるようになった。
見られる位なら自分から見せよう。
そう思って顔をあげようとしたその時。
ぽんっ。
私の頭に岸本の手が置かれた。
そして、ぽんぽんと軽く頭を叩くともう一度優しく頭に手を乗せた。
「そんなに怖がらないで」
「え?」
許容範囲外の出来事にもともと混乱気味だった私の頭はついて行けない。
驚きと混乱から咄嗟に頭をあげると、そこには穏やかな表情を浮かべる岸本がいた。
たまにしか見ないけど、こんな顔は初めて見た気がする。
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