―野性―

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「クソッ!姉ちゃんのせいで遅刻するじゃんか!!」 俺こと、犬童 志狼(イヌドウ シロウ)は急いで朝食を食べながら文句を言っていた。ちなみに朝食といっても食パン一枚だ。朝からそんなに食べれない。 俺を遅刻ギリギリにした張本人は制服に身をまとい、家を出るところだ。 「遅刻って電車で学校に行ったらまだ間に合うよ?電車で一緒に行こうよ」 姉は俺を誘ってくる。そう、確かに電車で行けば普通に間に合うのだ。しかも、俺と姉が通ってい る高校は家から離れていて、近所の同じ学校の奴らもみんな電車通だ。しかし、俺は呆れたように 「姉ちゃん、俺が電車嫌いなの知ってるでしょ?」 そう、俺は電車が嫌いなのだ。別に乗り物自体が嫌いなわけではない。大人数が密閉した空間に閉じ込められている、朝の満員電車が嫌なのだ。色んな人の“臭い“で気持ち悪くなる。だから、俺はわざわざ自転車をこいで学校に行っているのだ。 「志狼は昔から人が大人数でくっついている場所が苦手だったものねー」 母さんが皿を洗いながら言ってくる。 「ほら、志狼にかまってたら志穂(しほ)も学校遅れるわよー」 志穂とは姉の名前だ。 ってか俺はどうでもいいのかよ。母さん。 「わかった。じゃ学校行ってくるね!お母さん!」 姉は元気よく家を出ていった。 さて、俺もっと。 「んじゃ、俺も行ってくる!」 ドアを勢いよく開け自転車へ向かう。閉まるドアのすき間から、 「スピード出しすぎて事故らないようにねー」 と、母さんの注意が聞こえた。
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