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突然、視界がぐらつく。
まさかこの症状はケルム切れ!? しまった……。怒りのせいで、ケルムを使う出力調整間違えたわ。昔、よく無駄に使い過ぎって、ラファエル先生に指摘されたのに……!
セリーナの意識が遠のいていく。自分のはぁはぁと言う息づかいだけが、かろうじで聞こえた。
ドアが開く。ルークが「大丈夫か?」と聞いてきた気がするが、反応する力はもう残っていない。
そして目の前が暗くなった――
★ ★ ★
と現在に至る訳である。
ビュンッ! ビュンッ!
……とりあえずアイツが何しているか見よう。
セリーナはそーと寝室のドアを開けて様子を見ると、ルークがやはり半裸で刀を振っていた。
「853、854、855……」
あれもしかして回数言ってんの!?
八百台ってどんだけ振ってるのよ……。
ふーっと溜め息をつき、冷静に思考を働かせる。
まずは……お礼よね。一応世話かけたんだし。
どこぞの貴族とあたしは違うんだから。
次は……あ、そうだ! お礼ってことで煮物渡せばいいじゃない! それなら自然だし、向こうも受け取ってくれるはずよ。
「べ、別に受け取って貰いたいとか微塵も思ってないから! 勘違いしないでよね!」
つい叫んでいたことには気づかないセリーナ。
最後は……そうよ、文句よ、文句。本来の目的を忘れるところだったわ。あの素振りの音、かなりうるさいんだからっ!
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