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「べ、別に受け取って貰いたいとか微塵も思ってないから! 勘違いしないでよね!」
俺が七セット目の素振りの後半に差し掛かっているとき、そんなセリーナの声が聞こえた。かなり大きい声で言うものだから、何事かと思い一旦素振りを止める。
寝言にしてはでか過ぎるよな。声かけてみるか。
「起きてるなら早く出てこいよ。こんなところに、いつまでも居たくないだろ?」
静寂な空気の中でハッと息を飲む声が聞こえる。
数秒後、セリーナは意を決したような顔で出てきた。手にはコップとよく分からない何かを持っている。
「その、ありがと……。これ、お礼と思って取っといて、夕飯の余り……」
そう言ってセリーナは持っていた何かを俺に渡した。貰ったものの中身を開けるとそこには煮物が入っていた。
「貴族なのに……結構庶民的な料理つくるんだな」
「う、うっさいわねっ! 庶民的で何が悪いのよ! 貰えるだけ感謝しなさい!!」
「ああ」
「なによその反応は! 貰ったたんだから、なんか言うことあるんじゃないの!?」
まさかお礼を言えと言っているのか? お前が俺にお礼の変わりにくれたものなのに。とんだ理不尽だ。
「何もないな」
「な、なんですって――!(ムグッ)」
怒鳴り散らしそうだったので、あわてて手でセリーナの口を塞ぐ。
「もう夜も遅い。怒鳴ると迷惑になる。用がないならさっさと帰った方が良い」
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