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闇にいた。最近ずっと俺の夢に出てくる闇。
その闇に一際目立つ明かりの中にある、灼熱の海に飲まれた村。……俺の故郷だ。
その村は炎海と呼ぶのが相応しいほど、酷い有り様だった。
その炎は“アイツ”らによって生み出された魔法。つまり、火属性魔法を流星の如く村に放ってきた。
その炎から逃れた村人たちは、アイツらの手によって着々と息の根を止められていった。そして、幼き日の俺は今――
アイツらと対峙していた。
「へッへッへッへッ。どうやって殺されたい? 火で体を少しずつ炙って殺さたいか? それとも内臓引きずり出してやろうか?」
「黙れっ! 前たち何かに殺されてたまるかっ!」
ただ泣いている弟のナイトを庇いながら、幼き俺はアイツらに声をあらげる。
「へーへッへッ! 人間の餓鬼風情が俺様に歯向かってるぜ。滑稽だな、なぁお前ら」
そこで同意するかのようにアイツらはニヤニヤと笑い始める。その笑いは汚くて、下品な笑みだった。
「人間なんて脆いもんよ。だってほら――」
そう言ってソイツは目の前に現れ、俺の腕を掴む。ただそれだけで俺の腕はペチャンコに潰れた。
「これだけで腕が潰れる」
ソイツは俺の潰れた腕を掴んだまま投げた。なす統べなく、体重の軽い俺は後方へ飛ばされた。
ヤバイッ!
アイツらの前にはナイトがいる。このままでは……ナイトが殺されるっ!!
「ん? コイツが大事なのか? ふーん、そうか、そうか。へッへッへッ、よく見てろ」
そう言ってナイトの小さな頭を軽々しく持ち上げる。ナイトは恐怖からか足をジタバタし始めた。
「やめろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!」
やめろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!
幼き俺の声と、夢から見ている俺の声が重なった。
そのとき――
グサッ!
アイツらのリーダー格と思われるソイツの手が、
無情にもナイトの心臓を貫いていた。
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