198人が本棚に入れています
本棚に追加
セリーナは突然ぶつぶつと詠唱を始めた。
「――万物の氷よ、我が手に宿り大気を凍らせ、静寂と死をもたらさんっ」
「そ、その詠唱はじょ、上級じゃねぇか!?」
あからさまに狼狽えるアレン。
俺にはアレンが驚く理由がわからない。
「【superior・グラシスペース】」
白銀の世界が突然現れた。気温は数十度も下がり、まともに動けない状態になる。……もしもアレンが防いでなかったら。
「なんっちゃって。【inferior・マジックシールド】」
その場にいたアル、エド兄弟とシスルは自分で防御を張っていた。だが直ぐに割れたためアレンがフォローに入る。俺の周りにも薄青い膜が覆っていた。
「嘘っ!? なんで下級の防御魔法で、上級の攻撃魔法を防げるのよ! 有り得ないわっ!!」
「スゲーぜアレン!」
「私も兄さんと同様、素晴らしいと思います」
「いや~。優秀過ぎて困っちゃいますなぁ」
セリーナはヒステリックな声をあげている中、アル、エド兄弟はアレンを絶賛している。シスルは気にくわないと言わんがはかりに、不機嫌な顔をしていた。
感謝はしているが調子に乗らないでほしい……。
アレンたちの輪から離れると、ロイと金髪ウェーブの少女が話しているのを見かけた。ロイが俺ら以外に人と話しているのは、始めて見たので少しばかり驚いた。
最初のコメントを投稿しよう!