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その声はひどく消え入りそうな声量だった。普段見している強気なセリーナとは違い、傷ついた子犬のように弱く見える。もしかしたらこっちが本当のセリーナかもしれない。
でも、めんどくせーなぁ。
そもそも助ける義理なんてないし、助けて俺になんのメリットもない。どうせプライドの高いセリーナのことだから、助ければ余計にいざこざが激しくなるだろう。
「助けを求めるなんて……思った以上の効果だな。“母親”と同じようにボクの性奴隷にしてあげようかな?」
「ずるいでしゅよ。ボクも入れてくれないと困りましゅ」
……萎えたな。
この国の貴族はもう信用できない。俺は弱いくせに吠える犬が一番嫌いだ。力を保持して何になる? こんな奴らがいるから“この世界”は弱いんだ。
次世代を担うまともな貴族であろう、セリーナに力を貸してやるため、俺は重い腰を上げた。
「おい」
声をかけるとコンマ一秒もかかってない速度で振り返る二人。セリーナも驚いた顔でこっちを見ていた。
さて、どうしたものかな……。
声をかけたのはいいが、言うことがなくて声が詰まる。それを見てモヤシと肉団子が、ここぞとばかりに言った。
「なんでしゅか君は! 痛い目に遭いたくないなら、大人しく投降するでしゅ!」
「待って、クダン。……こいつルーク・ルシュファルドだよ。たしか一組だからケルムラックとはいえ強いかもしれない……。ここは冷静になって、こいつにも重力魔法をかければこっちの勝ちだよ」
うん。なんて言おうか、ホントに悩むな……。
「そ、そうでしゅね、シモヤ。ありがとうでしゅ」
「どういたしまして」
しかたない。昔、依頼で潰したギャングのセリフでも使うか……。あんまし締まるセリフでもないんだが。
「ちょっと貴方何してるのよっ! さっさと逃げなさい」
ん?
セリーナの声が聞こえた瞬間、見えない何かに押し潰される感覚がした。しかし、立ってられない程ではない。
「な、なんで立ってられるんでしゅか! 今体重は五倍近くまで上がっているはずでしゅよ」
「知るか」
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