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俺はめんどくさいなぁ、と思いながら振り向いた。ここで振り向かないと、もっとめんどくさいことになるからだ。
俺はジーとセリーナを見る。そのときパンツが見えそうになり顔を背ける。しかし心なしか何色か気になる……わけない、ない。
「ああ、もうっ! そこまで律儀だと逆に腹立たしいわ。……はぁ、もう“ずっとあたしと喋って良い”から。その、俺は喋れないんだが的な目、やめなさいよ。べ、別に貴方と喋りたい訳じゃないからねっ!」
……ふぅーっ、焦ったぁ。いや、焦ったな。
一瞬、パンツを見ることが律儀なことかと思った。
「そりゃ、どうも」
俺はもう良いか、というように立ち去る。が、セリーナに「待ちなさい!」と阻まれる。……もう何回目だろうか。しかもさっきより声が大きい。
「なんだよ」
「その……立てないの」
「じゃあ無理して立つな」
俺はセリーナを気遣い言った。
「あたしは立ちたいの!」
「じゃあ無理して立てよ」
意味が分からない。
「もうっ! 腰が抜けて立てないのよ……」
「腰抜けるって……」
「う、うっさい……。さっさと手貸しなさい」
はいはいと心の中で思いながら手を貸す。そのとき、白くて綺麗な足が見えたかと思うと、白い物(ぶつ)が見えた。
「無難な白か……」
しまった! と思った時には、時すでに遅し。
セリーナは顔を真っ赤にしてスカート裾を下に引っ張り、神速のスピード立ち上がる。そして俺の鳩尾に渾身の一撃を叩き込んだ。
普段の俺なら難なくかわせる筈なんだが、なぜかかわせなかった。学園に来て平和ボケしたんだろうか。というかちゃんと立てるじゃねぇか。
「ふんっ。あたしに助ける理由を求めた罰よ」
そう言って、セリーナは立ち去った。
理不尽だ……。
俺はしばし屋上で尺取り虫のように踞(うずくま)り、動けないでいたのであった。
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