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時刻は夜になり、辺りが暗くなってきた頃。
俺は集合場所である小さな村に来ていた。……ジンと一緒に。
「俺が居ないと傭兵だって認めて貰えないだろ。だってルークは糞ガキだもんなあぁぁぁぁぁぁっ!!」
確かに一理ある理由だが、ジンもギルマスとは思われないだろう。酒の匂いを常に周囲に放っているのだから。
『ばっかじゃないの!? 誰がアイツのことなんか……!』
『のわりには顔が真っ赤だよっ』
『ふふっ、本当ですわね』
村の宿をひとつ借りているらしく、そこに行こうとしたわけだが……なんか騒がしい会話が聞こえた。
『落ち着けって……。心配しなくても俺もお似合いだと思うからよ』
『僕も、僕も』
『貴方たち……! そんなに早く死にたいのかしらぁっ!!』
さっきからうるさい娘が叫んだと同時に、バキバキバキバキバキバキッ! と周囲に異様な音が轟いた。
若干気温が下がった気がするのは、おそらく気のせいではないだろう。
『君たち、もっと静かに出来ないのか。もうすぐ傭兵が来るんだぞ……!』
『なにビビってんだよっ』
『君は馬鹿か。傭兵だぞ傭兵。学園が雇ったとはいえ、傭兵なんてギルドのはみ出し者集団のことなんか信用できるか! 特にボクなんか大貴族なんだから、何されるかわかったもんじゃないか』
『んー? わりぃ。耳ほじってたら聞こえなかった』
『君はいつか必ず殺す……!』
俺はまだ宿の外にいるのに、ここまで聞こえるほど喧騒だ。かなりうるさい……。まあ、俺の耳が良すぎるのも原因だろう。
「なんか……うるさい連中だな」
俺と同じ感想をもったジン。だが俺にはそれが白々しく聞こえた。そう、ジン。俺はお前にひとつ物申したいことがある。
「ジン……知ってただろ?」
「何をだ?」
「アイツら全員、俺のクラスメイトじゃねぇか!」
宿屋にいたのは、先日の試験の上位六名だった、俺も少なくとも顔くらいは見たことがある。
「ま、まっさかぁ! そんな偶然があるんだな……」
鞘で頭を思いっきり叩いた。本日三回目である。
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