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どうすんだよ。このままじゃ俺が傭兵だってバレるじゃないか。特に貴族たちは傭兵のことをかなり嫌っているらしく、バレると何かと厄介だ。……シスルとセリーナはもう手遅れだけど。
「ほい」
「……なんだよこれ」
ジンがほいっと渡してきたのは、魔獣タヌーキの仮面だった。まさかこれを……つけろとか言うんじゃないんだろうな。
「名前は、ぽんぽこ仮面」
「はぁ?」
なんだよ、ぽんぽこ仮面って……。
「とりあえずつけとけよ。バレたくないんだろ?」
苦渋の決断とはまさにこの事じゃないだろうか。タヌーキを気持ち可愛くしただけの仮面。通称ぽんぽこ仮面……。
「はぁ、わかったよ……」
俺はしくしく仮面を手に取り顔に装着する。腹立たしいことにフィット感は絶妙だ。
「に、似合ってるぞ」
「ぶちのめすぞ……!」
仮面をつけた俺はジンと一緒に宿屋に入る。とたんに周囲から好奇の目を向けられた。その目を掻い潜って生徒六人の場所で行く。
「何なんだ君たち?」
「依頼された傭兵だ」
シスルが聞いてきたので端的に答えた。すると六人から疑いの向けられる目を向けられた。
「なんで仮面付けて顔を隠してるのよ」
「趣味だ」
ジンが答える。
ギロッとジンを睨むとスルーされた。ここでジンを殴っても話にならないので我慢する。
「お前ふぁ誰なふだよ」
口のものを飲みきってから喋れよ。汚いだろうが。よくもまあ、アレンはこんな状況で飯が食えるな。ある意味才能だろ。
「俺か? 俺はギルマスだ」
「嘘をつくな! 傭兵相手にギルマスが同行するわけないじゃないか!」
シスルの発言に対して、ジンはギルマスのギルドカードを見せることで解決した。俺も同様に見せる。
「いやぁ、コイツどう見ても変質者だろ? だからギルマスの俺が直々に同行したんだ」
なるほどーと納得する一同。
何ちゃっかり嘘をついてるんだコイツは。俺がクラスメイトと会うときの焦った様子を、見たかっただけだろうが。
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