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「じゃあ、俺は帰るから」
「ああ。帰れ、帰れ」
ジンは依頼内容の確認などをした後帰っていった。他にもたくさん仕事があるらしい。かなり嘘くさいが……。
で、ただ今気まずい空気が立ち込めていた。仮面をつけた謎の傭兵に、話しかける物好きもいないだろう。しかし、そんな空気の中、アスナが俺に言葉を掛けた。
「えっと、傭兵さん。私はアスナって言います。出来れば呼びにくいので、名前を教えて下さいませんか?」
俺の名前? 俺の名前はルークだが、ここでルークと名乗るほど、俺は馬鹿じゃない。そう考えると、俺の名前は、俺の名前は――
「俺の名前は……何なんだ?」
つい口に出してしまった。
「それを今ボクたちが聞いているんじゃないか!」
ごもっともです……。
名前、名前。適当な偽名を使うか。
「ルアだ。年はたいして変わらないから、敬語で話さないでくれ。こっちもやりにくい」
アスナに向かって言った。年は変わらないっと誤魔化したのは、少しでもバレる確率を減らすためだ。
「うん、わかったよ」
アスナは多少短めの紺色の髪を、左側に寄せて茶いリボンでまとめて結んでいた。目の痣を隠しているが、その髪型はアスナにはとても似合っている。
トップスの上に黄土色のカーディガンを着用し、足にピッタリと合う髪と同じ色のズボンをはいていて、長いスラッとした足がよく映えていた。
「俺はアレンだ。よろしくなっ」
にっと白い歯を見せてイケメンスマイルを見せるアレン。カーゴパンツにTシャツというラフな格好だが、アレンのイケメンさは衰えを知らない。
「シスルだ。四大大貴族を担う正真正銘大貴族だ。くれぐれも態度には気を付けてくれ」
癖のある金髪を弄りながら見下したような目を向けてくる。上下真っ白なタキシードのような服を着ているが、とても魔物を討伐しに行く格好とは思えない。
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