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その後。
両手では数えられないくらいの魔物を倒し、俺たちは神域の奥へと進むか否かで話していた。
本当は奥に行く必要はない。依頼内容は神域の比較的浅い所にいる魔物の掃除だからだ。
浅い場所にいる魔物ほど弱く、知能が低い。そのため神域の近隣に住んでいる村や町に多大な被害が出て、よく依頼がギルドに来るのだ。
逆に奥にいる魔物は強く、知能も高い。自分達のテリトリーを荒らされない限り、無闇に人を襲ったりしない。
なのだが……。
「奥に行ってみないか?」
傲慢貴族のシスルが他の皆に提案する。だがすぐには皆、答えを出せないでいた。
「でも……依頼内容的には奥に行く必要はないよね」
アスナがおずおずと返事をした。
「しかしこの辺のレベルの魔物たちは弱すぎるじゃないか。全くもってつまらなさすぎる」
「確かにそうね……」
セリーナが同意したことにより、シスルの発言力が増す。アレンも頷いているし、恐らく賛成なのだろう。しかし俺は反対した。
「止めておけ。過信は命を落とすことになる」
「知ったような口を聞くな! さっきからただボーッと突っ立ってるだけじゃないか!」
シスルが突然大声を上げたため、木に停まっていた鳥たちが、バサバサバサッと周囲に逃げて行った。
「俺はお前たちが危なくなったときだけ助けるよう依頼を受けている。だから動いてないだけだ」
「そんなこと言って本当は弱いんじゃないの?」
全くその通りです、セリーナさん。おそらく、この中で俺が一番弱いでしょう。“素の状態”なら。
「奥行こうぜ。いざとなったらルアが助けてくれるんだろ? なら奥に行ってもいいじゃねぇか。こんなんじゃ、実戦練習にもなりゃしねぇよ」
実戦を舐めすぎだ。しかしアレンの言うことは一理ある。弱い魔物を倒し続けてもなんの成果も得られないだろう。
「……危なくなったなら退くからな」
「もう! ルアったら素直じゃないんだからぁん」
……凄く、殴りたい。
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