ギルドの依頼

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 神域奥地。  そこはかつてエルフが住んでいた場所であり、人間たちは近寄ろうともしなかった、まさに秘境。  エルフが住んでいた痕跡として、今はもう朽ちてしまったボロボロの家々が立ち並んでいた。  家はほとんど苔に覆われており、さながら緑のカーペットに飲み込まれたかのように錯覚するほどだ。  しかしそれが幻想的に見えるのはなぜだろうか。 「……綺麗」 「ふふっ、そうね」 「絵にしたいぐらいですわ」  女性陣にも好評のようだ。ただの苔に覆われた村、というだけなのに目を奪われてしまう。真上から月明かりが差し、周囲は嘘のように静寂。まるで外界から切り離された、別世界のようだ。  ……それにしてもなんだ「ふふっ、そうね」って。セリーナはそんなことを言う性格だったのだろうか? 女子という生き物は全く理解できないな。  ブゥゥゥゥゥゥゥゥウウウウウン!!   俺はそんな感想を持ったとき、急に喧しい羽根音が聞こえたかと思うと、この絶景を台無しにするかのように、前方から大量の虫が迫ってきていた。  虫と言ってもバルトホーネットという魔物だ。  後ろの針には猛毒が含まれており、刺されると死にはしないが長時間体がマヒし、動くことが儘ならない状態に陥ってしまう。  体長は三十センチ弱なため攻撃が当たりにくい上に、かなりすばしっこい。経験の浅い学生が魔法を当てるには少し難ありの強敵だ。  そしてBランク……。かなり厄介だ。 「中々歯応えがありそうな魔物が来たじゃないか」 「そうだな」  シスルとアレンは早く戦いたくてうずうずしていたのか、誰よりも早く先制しに行った。 「まずはボクからだ!【inferior・ライトニング】」  シスルは雷属性の下級魔法を放つと、刹那、稲妻と呼ぶべき雷撃がバルトホーネットに向かっていく。しかし難なくバルトホーネットはその攻撃をかわした。  その後、アレンも光属性の魔法を放つがかわされる。そしてバルトホーネットがかわした先にいたのは俺たちがいる方だった。
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