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ざっと見積もっても百匹くらいいる虫の大群が、バァーっと押し寄せて来た。
気持ち悪りぃ……。
俺は虫があんまり好きではないので拒否反応をしてしまう。しかし、俺より女性陣たちの方が酷いようだ。顔が青ざめ血の気がなくなり、善人が地獄に立ったかのような顔をしていた。
「やだっ、来ないで!」
セリーナの元に一匹のバルトホーネットが突っ込んで来たが、セリーナは反抗できずに叫ぶことしかできなかった。
「【骨動・超振動】」
周囲の大気を一瞬振るわせ、バルトホーネットの動きを鈍らせる。その間に高速で半分弱くらいぶった切った。
すると仲間がやられた恨みからか、さらに数十匹のバルトホーネットがこっちに向かってくる。
「余計にこっちに来たじゃないの!」
どう考えても不可抗力だろ。まったくうるせーな。ちょっと黙ってろよ。やかましくて敵わんわ。
なんて口に出せるわけもなくて……。頑張って倒すしかないっていう。
「【骨動・真空波】」
今度は自分の腕の周りだけ大気を振るわせ、真空状態の波動を放った。この技は前にもセリーナに見せたが多分大丈夫だろう。あのときはセリーナにも余裕がなかったし……。
バルトホーネットとはと言うと、全部ぶっ飛ばし全滅させた。少し手間をとったがさして問題ない。こういう魔物は範囲攻撃が手っ取り早いのだ。
シスルとアレンとも合流し、シスルは不満げ、アレンは称賛を浴びさせてきた。
「スゲーな、ルア! あれ風属性魔法だろ? いや……マキに変化はなかったな。なんでだ?」
……あっ、ルアって俺のことか。久々に偽名を使ったから気づかなかった。
「あれは骨動っていう武術の類いでな。ミクロ単位で骨を振動させて攻撃するんだ」
まあ、師匠から習ったら技だけど……。
「いや、無理だろ」
あからさまに手を振って否定するアレン。
「三年かかって体得したからな」
「三年!?」
今度はアスナが声を上げた。そんなに驚くほどのことでもない。同時に進行でいろんな修行を受けていたとはいえ、呑み込むのにかなり時間がかかった。
「この話は終わりだ。次行くぞ」
俺は皆の言葉を遮って先に進んでいった。
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