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「とにかく足を動かせ! 後ろを振り返るな!」
皆エンフォースという身体強化魔法を使っているのか、そこそこのスピードが出ている。しかしいつまでもつかわからない。ケルムは無限にある訳じゃないからだ。
「きゃっ!?」
ベタな悲鳴を誰かが上げたかと思うと、セリーナが木の根に足を捕られて転んでいた。
めんどくせー!!
「皆先に行け! コイツは俺がどうにかする!」
俺は他の五人にそう伝えながらセリーナを抱える。皆心配そうな顔で一度は足を止めてしまったものの、アフリートウルフが雄叫びを上げたことによって、またすぐに走り始めた。
とりあえずセブンスセンスで足を強化して跳躍する。着地地点は木の枝。そこからまた跳び跳ねて枝に着地を繰り返し、木の上を高速移動した。
「きゃあぁぁぁぁぁああああっ!」
「うるせーな! 黙ってろ! 落ちやしねーから」
「無理! 高いとこ無理ぃ!」
「じゃあ目つぶってろ」
こんなやつに構っている暇はない。アフリートウルフは鼻が相当良かった筈だ。アレンたちより俺らの方がアフリートウルフに近かったから、恐らくこっちを追いかけて来ている。
試しにセブンスセンスで気配を探ると、やはりここから一直線上の真後ろにいた。
アレンたちはどっちかというと聖域の“奥地”の方へ向かって逃げていた。……早く合流しないと。
「おい!」 セリーナに呼び掛ける。
「なによ!」
「匂いを消せる魔法か、体臭を消せる魔法は使えるか?」
「そんなにあたしの体臭が臭うのね……!」
いや、ボケなくていいから!
「使えるか、使えないのか」
「そんな需要の少ない魔法、使えるわけないじゃない!」
この状況かならかなり使えるのだが……。アフリートウルフ撒けるし。と考えていたそのとき――
ザアァァァァァー。
そんな一定のリズムで流れる音が聞こえてきた。
この音はまさか――
「滝だ!」
「ふえっ!?」
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