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セリーナの変な声は無視し、音が聞こえてきた方へ向かう。最初は滝の音が聞こえてなかったセリーナも、ある程度聞こえるようになったのか、質問してきた。
「なんで滝に向かってるのよ」
「滝に行けば水が俺たちの匂いを消してくれる筈だ」
「……そんなに匂いかしら」
自分の腕や髪を匂うセリーナ。
そういう意味じゃないんだがなぁ。
「アフリートウルフはかなり鼻が良い。このまま逃げても撒くことはほぼ不可能だろう」
「う、うそ……」
「たがら水で体臭を消してどこかに身を隠し、アフリートウルフが通りすぎるまでやり過ごすしかないんだ」
「……変なお面を顔に着けている癖に、結構色々考えてるのね」
「これを着けているのは本意じゃないんだがな……」
そうこう喋っている内に、滝の前までたどり着いた。高さ約10メートル、横幅約20メートルと横に大きな滝だ。
今は滝壺近くの岩場で腰を落ち着かせているが、とにかく水飛沫が凄い。このままここにいるとびしょ濡れになりそうだ。
水飛沫が月に反射し、キラキラと光ってとても綺麗だ。しかし、今はそんな感傷に浸っている時間もはない。
身を隠す場所を探さないと……。
「あそこ……!」
「どうした?」
「滝の裏に洞窟がある! あそこなら身を隠せるんじゃない」
セリーナが指差したところの場所を見ると、確かに周りより黒い場所があった。だが滝越しに透けて見えているだけだから、ただの岩って可能性もある。
そのことをセリーナに聞くと「岩だったら滝に当たって滝の向きが少し変わるはずよ」と言われた。案外その通りかもしれない。
「でもどうやって行くんだよ」
「貴方ご自慢の脚力があるじゃない。木の枝をスイスイ跳んでいたときみたいに跳んだら?」
「いや、滝に呑み込まれて滝壺に沈んじまうだろ」
「ふっ、任せなさい。【middle・フリーズン】」
セリーナが魔法を唱えると、洞窟があると思われるところの上だけ凍りついた。そして人が身を隠せるくらいの小さな洞窟が現れる。氷は溶けない限り水には当たらなさそうだ。
「どうかしら?」
ドヤ顔に反応するがめんどくさいので、適当に拍手をしていたら殴られた。
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