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アレンと別れて数分後。
一陣の風が吹くと、急に近くにある木が大きく揺れ、上の方からガサガサという音が聞こえた。
アスナはビックリして急いで木に目を走らせると、ちょうど黒い影がこっちに向かって落ちてきた。
ああ……、殺られたなぁ。
アスナは魔物が上から不意討ちを喰らわして来たかと思い、半ば諦めて脱力していると――
「あ、あぶなっ……!」
「ちゃんと下見てから着地しなさいよ! アスナ踏んずけちゃうところだったじゃない!」
――ルアとセリーナが目の前に居た。
「えっ、えっ、えぇぇぇぇぇぇえええっ!!」
「凄い反応だな……」
アスナは不覚にも素っ頓狂な声を出してしまった。冷静にルア君にツッコまれたのがかなり恥ずかしい。
「それより、あの馬鹿貴族と変態はどうしたのよ」
「シスル君は狼の魔物から逃げるときにはぐれちゃって……。それでアレン君は捜しに行ったの」
アスナが二人に状況を説明した。セリーナとルアは、アスナが言うことを黙って聞いていた。
「……っ! まずいな。二人とも大分奥地に居るぞ。アフリートウルフより協力な魔物いるかもしれない……」
「なら急ぐわよ!」
「ああ」
なんで居場所がわかるんだろう。ここで合流出来たのも偶然じゃないのかな。
「ここから出口までかなり距離がある。このままここに居ると危険だから着いてこい」
さっきのロイとは真逆のことを言うルア。でも下級の魔物しか出てこないのは、なぜだろうかとアスナは思い、そのことについて、シスルとアレンの元へ向かいながら聞いた。
「どうしてこの辺りは下級の魔物しかいないの?」
「あそこに紫色の花があるだろ。あれが中、上級の魔物には苦手な臭いを放っているんだ。だがあの花はすぐに枯れるから、もうじきここらに居るのは潮時ってことだ」
ルアは紫色の綺麗な一輪の花を指差しながら答えた。
なるほどとアスナたちは納得する。学生には無い知識だ。傭兵ならではの小ネタなのだろう。
そうすると、偶然この花がある場所に逃げてきたアスナたちは運が良いかもしれない。
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