198人が本棚に入れています
本棚に追加
おい、おいマジか。あんなのどうしろってんだよ。
ドラゴンの体長はおよそ20メートル。サイズから判断して、太古の昔から存在するドラゴン中のドラゴン……古龍だ。
『なにやつだ。お主らの援軍か?』
突如、重々しい声が鳴り響いた。しかし誰から発せられたかは分からない。キョロキョロと周囲を見渡すがやはり誰もいなかった。
まさか……こいつか!?
『お主らも我が話せることに驚いているいるのか? まったく……なぜ我が話せないと思うのか、理解に苦しむな』
「当たり前だ! 魔物ですら喋られないんだぞ」
シスルが遠くで怒鳴っている。まるですべてを否定するように。
『それは人語限定での話だろう。実際魔物だって話せる。人間だけ特別だと思っているから、そのように驚くだけだ』
「黙れっ!」
シスルは自分の武器である細い双剣を抜くと、双剣先を斜め後ろの下側に向けて、肘を伸ばしながら特攻をしかけた。
「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉおおおおっ!」
『無駄だ』
ドラゴンが一言発するだけで、シスルが何かに吹き飛ばされた。そのままシスルは後方にあった木にぶつかり「がはっ」っと肺から息が抜けた音が聞こえた。
『我は死なないように加減しているのだ。そろそろ諦めたらどうだ。我には絶対に勝てぬぞ』
「だま……れ」
ドラゴンはアレンを見て『そこの……人間は――』とアレンに何か言いたげだったが、アレンと目が合うとそのまま続けた。
『――利口のようだ。もともと我に対して敵意はなかったようだが』
「当然だ。ドラゴンは温厚な魔獣だと聞いたことがあるからな。もしものことがあって、シスルが危ない目に遭わないようにしてただけだ」
『なるほど。たしかに我に危害を加えるか巣を荒らさない限りは、原則人間には手を出していない。過去に人間を殺したのも数回だ。……何百年もの前の話だが』
「うそだ! うそだ! うそだ! うそだ! うそだ! うそだ! うそだぁぁぁぁぁっ!!」
最初のコメントを投稿しよう!