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シスルは突然、頭を押さえて発狂し始めた。その場に膝をつき、サラサラの金色の髪を掻きむしりながら崩れる。もう精神は戦闘不能だ。
『どうしたのだ? こやつ、気でも狂っておるのか?』
「くそぉぉぉぉぉッ!! 父上ぇぇぇえっーー!!」
シスルは不可解なことを叫んだあと、死んだように気絶した。アレンが揺すってみるが起きる気配はない。しかし、しっかりと呼吸をしているようだった。
よく分からないが、とりあえず俺達もアレンらのところへ向う。
「シスル君は大丈夫なの?」
アスナが一番最初に声をかけた。すぐにシスルの横に屈んでいたアレンが答える。
「呼吸はしているから多分大丈夫だ。でも精神的に不安定に見えたからな……早く帰った方が良い」
「こいつが……あたし達を見逃してくれるかしら」
セリーナがそう言うと、全員ドラゴンを見やる。
『……別によい』
「なっ!? ま、まさか……」
「どうしたのアレン君!?」
「ドラゴンが、デレただと……!?」
『やはりお主は残れ』
あーだーこーだーあったが、結局アレンも見逃してくれた。実はドラゴンは優しいのだ。
そして皆で帰ろうとしたとき、後ろの茂みからガサゴソと聞こえた。振り返って見ると、アフリートウルフ。……唾液が滝のように出ていた。
「……ガアァァァァッ!」
アフリートウルフは唾を盛大に撒き散らすと、こちら目掛けて突進してきた。
まずいっ!
そう思った俺はセブンスセンス全開でアフリートウルフに迎え打つ。魔剣(といっても刀)を引き抜き牙を受け止めると、ガガガッと嫌な音をたてながら、なんとか初撃を防ぐことに成功した。
『い、今のは……!』
ドラゴンの声が聞こえた気がした。
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