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俺は一旦アフリートウルフと間合いをとり、一度刀を納刀する。刀を体の左にもっていき、左手は鞘、右手は柄に手をかけた状態のまま走り出した。
アフリートウルフも走り出す。俺は走りながら間合いのタイミングを伺い、ベストなタイミングで刀を振り抜いた。
「【居合い・真十文侍(まじゅうもんじ)】」
十の斬撃が、一瞬にしてアフリートウルフに襲いかかった。
真一文侍から派生した居合いである真十文侍。特に威力が変わったのではなく、真一文侍を計十回行ったたけだ。
しかしセブンスセンスなしでは使うことができないという難点がある。
と言っても、そのぶんこの技には十回斬るのではなく、十回“抜刀して”斬るという強さがあった。
つまり一回斬るごとに刀を納め、居合い斬りの最大限の力を引き出しているのだ。
おそらく端から見れば、俺の手は霞んで見えただろう。僅か一秒の間にやってのけた芸当なのだから。
しかし、その十もの斬撃をくらってもなお、アフリートウルフは倒れなかった。それどころか余計に怒らせてしまったようだ。
アフリートウルフの筋肉は隆起し、一回りも大きくなる。気づいたときには爆発的なスピードで俺の目先に現れていた。
バシュッ!
肉が引き裂かれた音が聞こえた。刹那の鮮血。腹の辺りを見ると、真っ赤に染まっていた。ザックリとやられたようだ。
「くっ……」
俺は余りの出血量に目眩がし、その場に膝をついてしまった。その一瞬を狙っていたかのように、アフリートウルフが俊足で頭突きをくらわしてきた。
「ガハッ……!」
気がつくと空中に身を飛ばされて吐血していた。目がグルグル回り、視界が定まらない。軽く数十メートル飛ばされると、大木に当りなんとか止まることができた。
「おい、大丈夫かよ?」
さすがに学園が雇っただけあって、ある程度はAランクだろうと大丈夫だと思っていたアレンは心配の声を上げた。
しかし俺には返事をする元気がない。
そんなことは関係ないと言うように、アフリートウルフは俺に追撃を仕掛けてきた。
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